売却の基礎

古い家を現状のまま売るときの契約不適合責任と告知事項

更新:2026年8月30日 ・ 監修:磯貝 周一(宅地建物取引士)
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古い戸建てを現状のまま売却するときに確認したい契約不適合責任、告知事項、物件状況報告書、付帯設備表の整理方法を解説します。

築年数の古い家は、傷みや設備の不具合があるだけで売れなくなるわけではありません。大切なのは、売主と買主が把握している状態をそろえ、どの状態で引き渡すのかを契約書に具体的に反映することです。「現状渡し」と書くだけでは説明が十分とは限らないため、分かっている事実と未確認の範囲を分けて整理しましょう。

契約不適合責任は「契約した内容」と違う場合の責任です

民法では、引き渡された目的物が種類・品質・数量について契約内容に適合しない場合、買主が追完、代金減額、損害賠償、契約解除などを求められる仕組みが定められています。古い家だから一律に責任がなくなるのではなく、契約でどの状態を前提に合意したかが重要です。

たとえば、雨漏りがあることを契約前に説明し、場所や確認時期を物件状況報告書と契約書に記載して、その状態を前提に価格と引渡条件を決めた場合と、売主が把握していた雨漏りを伝えずに引き渡した場合では、判断の前提が異なります。

「現状渡し=何も説明しなくてよい」ではありません

現状渡しは、売却前に全面的な修繕をしない取引条件として使われます。しかし、売主が知っている不具合や過去の修繕、越境などを伝えなくてよいという意味ではありません。責任の範囲や通知期間を調整する場合も、把握している状態を具体的に共有したうえで契約へ反映することが大切です。

まず「知っていること・資料で分かること・未確認」を分けます

記憶だけで回答すると、説明漏れや曖昧な表現が生じやすくなります。次の3区分でメモを作ると整理しやすくなります。

  • 現在把握していること:雨漏り、シロアリ、給排水の不具合、床の傾き、設備故障、越境など
  • 資料で確認できること:修繕の請求書、点検報告、建築確認・検査済証、測量図、境界確認書など
  • 確認できていないこと:長期間使っていない設備、床下や小屋裏、埋設物、擁壁の築造資料など

「異常なし」と言い切れない項目は、利用停止時期や未確認であることを記録しましょう。空き家では、水道・給湯器・エアコンなどが最後に正常作動した時期も重要です。

告知事項は建物だけではありません

取引前に整理する内容は、建物の傷みだけではありません。物件ごとに確認範囲は異なりますが、次の観点で確認すると抜けを減らせます。

建物・設備の状態

  • 雨漏り、シロアリ、腐食、給排水管の漏水・詰まり
  • 基礎や外壁のひび、床の傾き、建具の不具合
  • 給湯器、コンロ、換気扇、エアコンなど付帯設備の故障
  • 増改築、間取り変更、過去の修繕と保険利用

土地・権利・近隣関係

  • 境界標の有無、越境・被越境、私道持分、通行や掘削の取り決め
  • 擁壁、高低差、排水、地盤や浸水に関して把握している事実
  • 騒音、振動、臭気、近隣との申し合わせや継続中の問題
  • 地中埋設物、古井戸、浄化槽などの存在

履歴に関する事項

火災や事故など、購入判断に影響し得る履歴がある場合は、事実関係、時期、場所、その後の対応を確認しましょう。告知が必要か判断しにくい事情は、売主だけで決めず、媒介を依頼する宅地建物取引業者へ早めに共有するのがおすすめです。

物件状況報告書と付帯設備表を契約前に整えます

物件状況報告書は土地・建物の状態や過去の履歴、付帯設備表は設備の有無・故障状況などを整理する書面です。引渡し直前に急いで記入せず、査定から販売準備の段階で作り始めましょう。

  1. 家族や元居住者から不具合・修繕歴を聞き取る
  2. 契約書、領収書、写真、点検記録を日付順に並べる
  3. 現地で設備を一つずつ確認し、未使用期間も記録する
  4. 媒介会社と内容を確認し、売買契約書や特約との食い違いをなくす
  5. 引渡しまでに状態が変わった場合は、買主へ伝えて書面を更新する

インスペクションは判断材料を増やす方法です

国土交通省の制度に基づく建物状況調査は、一定の講習を修了した建築士が、基礎・外壁などの劣化事象等を目視や計測で調べます。古い家の状態を客観的に共有しやすくなる一方、隠れた不具合が一切ないことを保証する調査ではありません。調査範囲、調査できなかった場所、結果の有効期間を確認しましょう。

先に大規模修繕を行うより、現状売却・必要箇所だけの補修・調査実施後の売却について、費用と想定手取りを比較する方が判断しやすくなります。

責任の範囲と期間は、契約前に確認しましょう

個人間売買では、物件の状態や価格を踏まえて契約不適合責任の対象、通知期間、免責の範囲などを取り決める場合があります。ただし、売主が不適合を知りながら買主に伝えなかった場合などは、免責特約があっても問題になる可能性があります。

宅地建物取引業者が売主で、買主が宅地建物取引業者ではない取引には宅地建物取引業法上の特則があります。引渡しから2年以上となる通知期間を定める場合を除き、民法より買主に不利な特約は無効となるため、個人売主の仲介取引と同じ扱いではありません。

売却前の確認順序

  1. 権利証、固定資産税通知書、建築・修繕・境界資料を集める
  2. 建物、設備、土地、近隣、履歴の5分類で既知事項を書き出す
  3. 現地確認を行い、確認できない箇所も記録する
  4. 必要に応じて建物状況調査、測量、設備点検などの範囲を決める
  5. 査定額だけでなく、調査・補修費と売却後の手取りを比較する
  6. 説明内容、物件状況報告書、付帯設備表、契約条項を一致させる

古い家ほど、きれいに見せることより、分かっている状態を丁寧に共有できることが安心につながります。判断が難しい不具合や近隣事項は、販売を始める前に相談しておきましょう。

古い家を安全に売るための確認順序

  1. 建物・設備・土地・近隣・履歴の5分類で、把握している事実を書き出す
  2. 修繕記録や境界資料を集め、未確認の場所と設備も明記する
  3. 物件状況報告書・付帯設備表・売買契約書の内容を一致させる
  4. 必要に応じて建物状況調査や測量を行い、費用と売却手取りを比較する
具体的に考えると

たとえば過去に雨漏り修繕をした家では、「修繕済み」だけでなく、発生箇所、時期、施工内容、その後の状況を資料と一緒に共有すると、買主が判断しやすくなります。確認できない場所は無理に「異常なし」とせず、未確認として契約条件へ反映しましょう。

よくある質問

現状渡しなら、契約不適合責任はすべて免責になりますか?
一律には言えません。契約で合意した状態、特約の内容、売主が把握していた事実などによって判断が変わります。知っている不具合は具体的に伝え、契約書類と説明内容を一致させることが大切です。
インスペクションをすれば、売却後の責任はなくなりますか?
調査は状態を共有する判断材料ですが、隠れた不具合がないことを保証するものではありません。調査範囲と確認できなかった場所を理解し、告知と契約条件を別途整理しましょう。

確認した公的情報・参考資料

制度・税率・支援内容は変更される場合があります。個別案件では各窓口または専門家へ最新情報をご確認ください。

相談担当 磯貝周一
執筆・監修

磯貝 周一

株式会社MIRAI FRONT 代表取締役/宅地建物取引士。宝塚市出身・在住。

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この記事は一般的な情報です。登記・税務・契約などの個別判断は、司法書士、税理士などの専門家へご確認ください。
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